断片ログ 2 【新年に寄せて】
「やけに長い願い事だったな」
神社の境内から下る階段を降りながら、からかうような笑みを浮かべて彼は言う。 「だってお願いたくさんあって。商売繁盛とか、サッカーうまくなりますとか」 「なんだ、なりますように、じゃないのか」 「もう決まってることですから」 「そう思うなら願う必要もないだろう」 豪炎寺さんはますます笑う。 神様への願いは人に教えてはいけないと、あれは父さんにだったかな、小さい頃に教えてもらったことがある。 一年のはじめに祈りたいことはたくさんあって、どうするか迷ったのは本当だった。だけど小銭を賽銭箱に投げてから、頭の中で何度も繰り返し唱えていたのは、たったひとつのことだけだ。 どうか今年も、豪炎寺さんと一緒にサッカーできますように。 「……っと。おい虎丸、はぐれるなよ」 人混みの中、自然と手を引くようにされ、触れたてのひらはしだいに温まっていく。 「豪炎寺さん、今年はいい年になりますよ」 「うん?」 「俺、わかるんです」 少なくとも俺にとっては、と、つながれた手をそっと握り返して思う。だってほら、今年いちばん最初の日から、こんなに幸せなんだから。
11.01.01
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