断片ログ 4



【It is over.】 ※年齢操作:高校生くらい

 豪炎寺さんの顔を見て、あ、終わった、と俺は思った。たしかにいま俺は大事な話を切り出して、豪炎寺さんは「そうか」っていう返事をくれた。俺の決心を静かに受け止める様子で、わかった、という意味の「そうか」だった。その瞬間に終わってしまった。
 でも変だな、俺、別れてくださいなんて言ってない。そんなこと死んでも言うわけがない。それなのにいま返されたのは、そういうことをオレが伝えたときの答えだ。
 泣いてしまいたくなったけど、別れ話をしているわけじゃなかったから、豪炎寺さんがあとに続けたのは暖かく俺を励ます言葉で、会話の流れにおかしいところはひとつもなくて、俺が泣いていい理由もまだない。

 (――俺、高校卒業したら、店を継ごうと思うんです)

 ずっと前から決めていたのに、どうしてこんなに言うのが遅くなったのか、本当は俺は知っていた。豪炎寺さんの前にはいつも、俺の場所からはうまく見えない世界が鮮やかに広がっていて、俺はいつだって彼の肩越しにその風景を追いかけていた。隣に並んで同じ景色が見たかった。
 そのときが来たら俺を捨てるのは豪炎寺さんのほうなのに、お前が俺をあきらめたんだと、もしかしたら彼は言うかもしれない。




11.04.14

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